腸を育てる考え方-酪酸菌について

腸を育てる考え方-酪酸菌について

腸を育てる考え方-酪酸菌について

2022年現在、乳酸菌による睡眠の質の向上が SNS などを中心に話題になっています。睡眠の他に、ストレス緩和や腸内環境改善などが謳われており、世間の菌と腸に関する関心が爆発的に広まったように思います。
例えば、肌荒れや精神的な不調を感じた時、肌荒れであれば外的な問題解決。精神的なものであれば環境要因の改善に努めようとすることが多いと思います。
それらの対処・対応ももちろん必要なケアだと考えられますが、今話題の菌のように、体の内側から表面や精神などの形のない問題のケアを行うことができるようになっています。

これらはとある日突然発見された事実ではありません。医学や専門家の地道な研究によって日々明らかにされてきた物事です。

このようにしてより明確に健康管理がしやすくなった世の中で、こうした情報や方法を取り入れない手はないと思います。しかし、良いものだからといって過剰に摂取したりそれに偏った生活をすることも不健全だと言えます。

今回は腸内環境改善や腸活における、とても重要な要素「酪酸」について紹介します。話題に挙げられているものは乳酸菌ですが、乳酸と酪酸は実はとても密接に関わりあっています。
睡眠や腸内環境を考える上で、「短鎖脂肪酸」「酪酸」「乳酸」「酢酸」などのキーワードが肝となります。

今回は酪酸に焦点を当てますが、そのほかの〇〇酸や菌が気になる方は、ぜひ別記事も参照してみてください。



目次
1.短鎖脂肪酸と注目の酪酸の関係
2.日々の生活に酪酸を取り入れて大腸の健康を見直す
3.まとめ

 

1.短鎖脂肪酸と注目の酪酸の関係

●短鎖脂肪酸とは
まずは短鎖脂肪酸について簡単に説明します。
ヒトの消化のメカニズムでは全てを消化・吸収し切れない栄養素が存在します。オリゴ糖類や食物繊維類などの難消化性炭水化物などを指します。しかし、人間の体の中にある腸には腸内細菌が膨大に存在し、これらの消化を助けてくれています。これらの菌類の集合を腸内フローラと呼んだります。
短鎖脂肪酸とは、この細菌たちが難消化性炭水化物を分解する際に産生される脂肪酸のことです。 短鎖脂肪酸の中には、酢酸・酪酸・プロピオン酸と3つの有機酸があり、これらが必要に応じて吸収されることにより主に以下の働きを担ってくれています。
・蠕動運動の促進
・大腸の必須栄養源
・粘液の分泌
・水、ナトリウムの吸収促進
・腸上皮細胞の増殖

このような働きが腸内活動を活発にし、環境を整え健康を維持してくれています。

乳酸菌の働きが睡眠の質を向上させる効果が期待できるように、酪酸もまた健康的な生活に一役買っています。
しかしながら、乳酸菌を摂ることだけが睡眠の質を向上させているわけではありません。
乳酸菌の増殖には糖化菌というものが必要になります。乳酸菌だけが充足していても全体で見れば偏った健康状態になってしまう恐れがあります。また、代表的な善玉菌のプロセスにおいて、乳酸菌の次には酪酸菌という有用菌を働かせる必要があります。これらは腸内において上から下へ、酸素の濃いほうから低い方に向かって分布しています。
つまりそれぞれの菌は苦手な酸素濃度があって同じ場所には住めないことがわかります。腸活でよく耳にする善玉菌の安定的な増殖には、この3つの菌をバランスよく活躍させる必要があります。

●短鎖脂肪酸とプロバイオティクス
短鎖脂肪酸を増やすためには、これを産生してくれる腸内細菌を増やす必要があります。
乳酸菌をはじめ、より効果的な産生に期待されているのが生きた菌・プロバイオティクスです。ビフィズス菌や酪酸菌もその一つです。
菌を経口摂取する際、ほとんどの菌が腸内にたどり着く前に死滅してしまうことが懸念されていました。研究によっては、菌は死なずに腸内で活動をし始めるという意見もありますが、酪酸菌などの芽胞を形成している菌は、光に弱いビフィズス菌に比べて腸にたどり着きやすいと言われています。
体の内側は、強酸や強アルカリ、温度や光の影響が場所によって変化しています。
酪酸菌はその問題に強く、短鎖脂肪酸を産生し大腸の必須栄養素となりうることで広く注目されています。

●短鎖脂肪酸の過不足を判定する方法
短鎖脂肪酸が足りていない場合、主に便の臭いである程度簡単には確認することができます。
便の状態は健康状態や食生活に依存します。臭いの性質もそれに倣って変化します。しかし、短鎖脂肪酸が不足していると、便をコーティングする本来の役割を果たせずに、いつも以上に悪臭を放つことがあります。
難消化性炭水化物の不足やち腸内細菌の非活性によって短鎖脂肪酸が産生されなくなり、健康的な排便が難しくなってしまいます。
便に気になる悪臭を感じた場合は、直近の食生活を見直すか医師や専門家に相談する方が良いと思います。

2.日々の生活に酪酸を取り入れて大腸の健康を見直す


●酪酸と発酵
前述のように、酪酸は大腸の必須栄養源として効果が期待されています。
現在の研究では、大腸上皮細胞はグルコースやグルタミンなどの他の上皮細胞が積極的に好むエネルギー源があったとしても酪酸を優先的に消費すると言われています。
必須栄養源である短鎖脂肪酸の中で、酪酸は経口摂取による吸収が難しく、腸内細菌の活動、いわゆる腸内発酵のみ供給できるエネルギーです。
短鎖脂肪酸において大腸が優先的に酪酸を消費するかは目下研究中であるとされています。
このことから酪酸の重要性を改めて考えることができます。さらには、やはりその産生を担う細菌も注視しなければいけないでしょう。


●短鎖脂肪酸がその他の栄養素の作用を促進している
カルシウム、マグネシウム、鉄。これらは現代の健康においても不足しがちな栄養素です。これらのミネラルの吸収促進にさらに寄与するのが短鎖脂肪酸です。
そもそも大腸発酵が促進されることにより、他の栄養素の吸収が促進されていますが、この発酵によって産生された短鎖脂肪酸の役割がよりミネラルの吸収に役立っていることがわかります。
例えば、酢酸やプロピオン酸はカルシウムの吸収促進に役立っています。大腸でカルシウムの吸収が促進されると、骨の密度が増し、運動機能を向上させます。運動機能が向上すると筋肉に寄与し、血流や体温調整が安定します。
このことから、直接的に骨を強化する考え方に加え、菌と有機酸を安定的に増加させることでも健康を補う方法があることがわかります。
また、大腸で産生される短鎖脂肪酸にはコレステロールの合成を抑制する働きがあることも示唆されています。コレステロールの低下には、一般に水溶性の食物繊維が効果的とされています。ラットを用いた研究によれば、食物繊維のコレステロール低下作用に短鎖脂肪酸が役立っていたことがわかっています。

 

3.まとめ

短鎖脂肪酸がもつ生理作用には今回の記事では書き切れない要素が多分に含まれています。一概には言えないのが、短鎖脂肪酸があるから良いということではない点です。
健康に寄与する程度の有機酸が産生されている状態は、腸内細菌が活動的であると言えます。有機酸が産生されたことによって受ける恩恵は健康的な便となって排泄されます。もちろん便だけでなく、体全体にも好影響を及ぼすでしょう。
短鎖脂肪酸や細菌は主に腸内で活躍するものですが、腸はし消化器官全体の一部です。一本の管でできている以上、口から肛門に至るまで満遍なく良好な環境を維持できることが最大の目標になると思います。
一言では言い表せられない複雑に絡み合ったさまざまがヒトを形成しています。SNSなどの出会いをきっかけに、少しづつ時間をかけて自分の健康と向き合う一助になれば筆者としては此の上ありません。

 

 

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